大砂嵐関エジプト帰国 内乱状態荒れる国内で講演 「今は良い相撲取るだけ」(2013/08/13)北海道新聞
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大砂嵐 facebook より
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Google画像検索より
大砂嵐 金崇郎 (おおすなあらし きんたろう) | |
所属部屋 | 大嶽 |
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本名 | アブデラハム・アラー・エルディン・モハメッド・アハメッド・シャーラン |
しこ名履歴 | 大砂嵐 |
番付 | 前頭十三枚目 |
生年月日 | 平成4年2月10日 |
出身地 | エジプト・ダカハレヤ |
身長 | 189.0cm |
体重 | 155.0kg |
得意技 | 突き・押し |
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http://t2.pia.jp/interview/sp/oosunaarashi.jsp
筋骨隆々の肉体から鋭いかち上げと強烈な突っ張りで土俵を沸かす22歳の大砂嵐。アフリカ大陸出身、また、イスラム教徒として初の力士と国内外から注目を浴びている大砂嵐は、『七月場所』では横綱や大関に初めて挑むことになる。奇しくも、『七月場所』はラマダンと重なるが、当の本人は「関係ない」とキッパリ。大砂嵐はその視線の先に角界の頂点を見据えつつ、一番一番目の前の取組に集中することを誓った。
■大砂嵐金太郎
(おおすなあらしきんたろう)
1992年、エジプト生まれ。188cm、157kg。14歳の時に相撲を始め、2008年『エジプト相撲大会』優勝。『世界ジュニア相撲選手権』では個人戦で銅メダル、団体で銀メダルを獲得。2011年、大学を休学し来日、大嶽部屋の門を叩く。翌年の『三月場所』で初土俵を踏む。序ノ口優勝、幕下優勝、十両2場所を経て、新入幕を果たす。前頭15枚目で迎えた2013年『十一月場所』こそ7勝8敗と負け越すが、翌年『一月場所』では9勝6敗、続く『三月場所』では怪我で欠場を余儀なくされるも再出場し勝ち越し。『五月場所』で初のふたケタとなる10勝を挙げる。
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言葉もわからないまま耐えた、サバイバルの日々
──5月末に、母国のエジプト・カイロで『大砂嵐杯』というご自分の冠のついた相撲大会が開催され、大盛況だったという話を聞きました。
すごくうれしかったですね。エジプトで一番有名なスポーツはサッカーで、相撲は全然有名じゃないからね。ほとんどの人は知らないんじゃないかな。
──エジプトのアマチュア相撲の代表に交じって、実弟のターレクさん(18歳)も出場しました。
そう。1回寄り切りで勝った(満面の笑み)。でも、本人は「兄は日本で相撲をやっているけど、自分には関係ない」と言っていたみたい。彼は勉強の方が好きだから。
──『大砂嵐杯』は現地の大砂嵐ファンクラブが主催した大会だったけど、第2回大会の予定はありますか?
それはHOPE(期待したい)。この間は初めての大会だったけどお客さんもいっぱい来たので、後援会の人たちもビックリしていました。
──アラブ初の力士として現地でも大きく報道されているというニュースを耳にします。来日してから2年半、ここまでの道のりは長かった? それとも短かった?
う~ん、それは難しい質問ですね。長くもあり、短くもあったと言えば正しい答えになるかもしれません。稽古をいっぱいやっていたので、時間を忘れてしまったこともあった。でも、もっと稽古をたくさんしないと。
──来日当初は慣れぬ日本語でのコミュニケーションにも苦労した?
相撲の世界は日本語しかないからね。最初は何を言われてもわからなかったので、自分はハイハイと答えていただけでした。『お前、俺の言っていることがわかっているのか?』『ハイ!』みたいなやりとりばかり(苦笑)。半年くらい経ったら、ようやく自分から挨拶できるようになりました。いまは相手が喋っていることの80%は理解できる。自分から喋るのはまだ難しいけど。
──来日したら、それまでやっていたアマチュア相撲と大相撲の違いを痛感しましたか?
そうですね。エジプトでは稽古も1カ月に1~2回。それも1回に1時間くらいしかやらない。四股を50回、腰下ろしを50回、そしてちょっとだけ取組をやったら終わりという感じでしたからね。初めて日本の稽古をやった時には途中で疲れてしまい、ついていくことすらできなかった。そんなハードな稽古はやった経験がなかったので、最後は太股の筋肉が切れてしまいました。振り返ってみると、ヤバかったですね(苦笑)。
──ただ、耐えるのみ?
そうですね。序二段にも負けていたので、悔しかったですね。エジプトと比べたら環境が何もかも違っていたので、サバイバル(生き残る)しかないと心に誓いました。
──部屋制度という大相撲独特の仕組みに慣れるのにも時間がかかった?
いまは個室ですけど、最初は大部屋でしたからね。それも、サバイバル(微笑)。頑張るしかなかったですね。
国籍、宗教、人種も関係なく、早く実力で評価されるようになりたい
──部屋に戻ってから床を涙で濡らしたり、チクショーと呟くこともあった?
責任を負う立場になってきたので、いまもそんな感じですよ。地元の家族や友達に会いたくなるので、ホームシックになる回数もどんどん増えています。
──ただ、いまはインターネットを通じて海外とも簡単にやりとりすることができる時代になったじゃないですか。
いや、逆に簡単にコミュニケーションをとれることが良くない。だってコンタクトをとっていたら、もっと会いたくなるじゃないですか。なので、場所が始まる1週間前から僕はインターネットや携帯をいじることをやめることにしています。場所中はエジプトの家族と絶対にコンタクトをとらない。
──そこまでして相撲に集中しているわけですね。
そうですね。でも、そこまでしないと勝てないというわけではない。あくまで気持ちの問題です。
──日本の食事には慣れました?
(宗教上の理由で)豚肉は食べられない。でも、僕から見ると、日本食の90%は豚肉か豚の脂を使っているように感じます。だから口にできないメニューは多いけど、部屋では宗教の話がきちんと伝わっているので豚を抜いた食事を用意してくれます。チャンコだったら、鳥の水炊きがいい。ポン酢に鶏肉をつけて食べるのは美味しい。もうひとつのお気に入りは塩チャンコ。スープは塩ベースがいい。醤油味はあまり好きじゃない。外食で好きなメニューもあります。例えばラーメン。鶏ガラスープのラーメンだったら、大盛りで3~4杯は普通に食べることができる。刺身や納豆? 無理。絶対無理(苦笑)。
──『五月場所』では前頭10枚目として10勝5敗と大きく勝ち越しました。とんとん拍子に出世しているようにも見えるけど、相撲の難しさを感じることもありますか?
そうですね。相撲はすごく難しい。最初からパワーはあったけど、パワーだけで勝ち続けるのは無理。そのパワーと自分の気持ちをコントロールしないといけない。相撲には心技体という言葉があるけど、本当にそのバランスが大事だと思います。以前と比べるとだいぶ良くなってきていると思うけど、まだ十分じゃない。
──来日して以来、アフリカ・中東出身初の力士として注目を集めています。その注目度がプレッシャーになることもある?
なりますね。だからそのフレーズはあまりうれしくない。過去に海外のいろいろなメディアからも取材を受けたけど、どこも切り口は一緒でした。早く国籍、宗教、人種も関係なく、実力で評価されるようになりたい。
──ところで、家族で誰かスポーツをやっていた人はいたのですか?
お母さんのお父さん、つまり僕のおじいちゃんはレスリングをやっていました。去年亡くなってしまったけど、身長も190cmくらいあった。その遺伝子を僕は受け継いでいるのでしょう。死ぬ2日前に連絡したら、おじいちゃんは「あなたの夢が叶うまで諦めたらダメだよ」と言ってくれました。
いまの自分にとって重要なのは勝ちよりも負け
──来る『七月場所』はラマダン(イスラム教の断食月。2014年は6月28日(土)~7月27日(日)。この期間は日の入りから日の出までの間しか飲食することは許されない)と重なり合います。心配はない?
(即座に)関係ない。水を飲めないのはちょっときついけど、あとは大丈夫。ただ、日本のジメジメ(湿気)はちょっときつい。エジプトはジメジメしていないですからね。日本の夏の気候は全然慣れないですよ。
──世間ではライバルと目される遠藤関との取組に注目しています。やっぱり注目の一戦になるといやがうえにも力が入る?
いや、取組は誰が相手でも一緒。たとえ相手が横綱や大関であっても同じです。取組中にはそのことしか考えない。その時、僕の頭の中は無。目の前の相手のことしか見ていない。それだけ勝負に集中しているから、我に返ることができるのは取組が終わってからです。
──そこまで集中していたら、場所中はどんどん疲労がたまっていくのでは?
15日間ずっと集中し続けるので、ものすごく疲れますね。その持続は難しいけど、毎回100%以上の力を出すように心がけています。
──そこまで相撲に専念していると、息抜きも重要になってきますね。
プライベートもあるよ。このインタビューもプライベート(微笑)。
──本名のシャーランにちなんで、しこ名は大砂嵐。このしこ名は気に入っていますか?
大好きです。僕のフルネームはアブデラハム・シャーラン。日本だと名字のシャーランの方で呼ばれるのが一般的だけど、エジプトではみな名前の方で呼ぶ。だからアブデラハムと呼ばれる方がしっくりきますね。
──先場所は156kgでしたが、もっと増やしたい?
ベストは150kgくらいだと思うけど、いまは157kgあります。まわりからは『170~180kgがいい』と指摘されるけど、ブヨブヨは嫌い。僕はマッチョが好きなので、いまでもちょっとだけ筋トレをやっています。
──昔は100kg以上の体重があるにもかかわらず、片手懸垂や逆立ちしての腕立て伏せができたというエピソードを聞きました。いまでもできますか?
片手はわからないけど、両手だったら簡単に10回くらい懸垂はできるよ。だんだんブヨブヨになってきたけど、逆立ちしての腕立て伏せもできるだろうね。
──客観的に見て、ご自身の相撲の取り口についてはどう思いますか?
まずはかち上げ。それから突っ張り。僕の相撲はそのセットです(微笑)。今後稽古を積んで、もう少し腰を下ろした状態からかち上げをしたい。
──立合いの時、腰の位置が高すぎることを指摘されることもあります。
僕でもわかりますよ、高いことは。僕の体は固い。股割りなんか全然つかない。付け人が後ろから押したら、僕はずっと痛い痛いと叫んでいます(苦笑)。いまはヒジを前につけることができるようになったけど、昔はそれすらできなかった。
──最終的な目標はやはり横綱昇進?
そうですね。親方には「頑張っていれば4~5年でとれる」と言ってもらっているけど、僕は僕のペースで頑張りたい。まずは2年。それでダメだったら、あと1年。これからもマイペースでステップアップしていくつもりです。いまの自分にとって重要なのは勝ちよりも負け。負けた時にはいつも自分に「なぜ負けたのか?」と問いかけています。失敗は次に活かさないといけません。
取材・文:布施鋼治
撮影:大崎聡
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